ホワイトチャペル・ギャラリー、センガ・ネングディの軌跡を辿るアーカイブ展を開催

Senga Nengudi, Performance Piece, (detail), Silver gelatin prints, triptych. Courtesy Sprüth Magers and Thomas Erben Gallery, New York. Photo Harmon Outlaw

ホワイトチャペル・ギャラリーは、彫刻、振付、パフォーマンスの境界を横断する先駆的な芸術家であり教育者でもあるセンガ・ネングディのアーカイブ展を開催する。本展は、写真作品、資料、そして主要なパフォーマンスの映像を通じて、ネングディの芸術的実践の本質を多角的に検証するものである。

シカゴに生まれロサンゼルスで育ったネングディは、1960年代から70年代にかけてのロサンゼルスおよびニューヨークにおけるブラック・アヴァンギャルド・シーンの最重要人物の一人である。彼女の作品は、アフリカ、アジア、先住民のアートフォームから着想を得ており、フルクサスや具体美術協会(具体)、ヨルバ神話、日本の能楽、そしてジャズの即興演奏といった多様な文化・思想が複雑に交差している。

本展は、彼女の芸術的展開において重要な転換点となった時期の作品に焦点を当てる。ネングディは、パンティストッキング、砂、石、紙などの日用品や廃材を組み合わせ、独自の彫刻形態を構築した。これらの作品は、静止した物体として完結するのではなく、身体的な介入や振付によって「起動」されることを前提として設計されている。

中核を成すのは、ナイロン製のストッキングを主素材に用いたシリーズ『R.S.V.P.』である。出産後の自身の身体的変化や、女性の身体イメージに対する社会的な視線に着目したネングディは、素材の伸縮性をレジリエンス(回復力)と転覆の象徴として扱った。砂を満たし、引き伸ばされたストッキングは、展示空間に内臓や身体の一部を想起させる構造を作り出し、ダンサーのマレン・ハシンガーとの協働によって、感覚的な没入空間へと昇華された。

また、屋外に設置され、風雨といった外的要因によって動かされる『Spirit Flags』シリーズや、循環呼吸を用いて自身の身体を楽器へと変容させる『Air Propo』などの記録映像も紹介される。これらの作品は、外部の力や身体の限界が、造形物の動きや形態にどのような影響を及ぼすかという彼女の一貫した関心を示している。

ロンドンの公設ギャラリーでは初となる今回の個展は、現代彫刻界におけるネングディの歴史的意義を再考する機会となる。同時に開催されるヴェロニカ・ライアンの展示との対話を通じて、彼女の表現が後世の作家に与えた影響についても考察を深める。

展示詳細および歴史的背景

本展は、ネングディの芸術的展開において決定的な役割を果たした1972年から1982年の作品を中心としている。主な展示作品および関連年表は以下の通りである。

  • Spirit Flags1970年代初頭にニューヨークで制作されたシリーズ。
  • R.S.V.P.1976年より開始された、ナイロン素材を用いた代表的な彫刻シリーズ。
  • Performance Piece1977年)および Performance with Inside Outside1978年):身体の柔軟性と緊張をテーマとしたパフォーマンス。
  • Air Propo1982年に発表された、身体そのものを楽器として扱う即興パフォーマンス。

展覧会「センガ・ネングディ」は、2026年4月1日から6月14日までホワイトチャペル・ギャラリー(ギャラリー5)にて開催される。ギャラリーへの入場は無料だが、一部の企画展は有料となる。開館時間は火曜日から日曜日の11時から18時までで、木曜日は21時まで延長される。

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