メキシコシティを拠点とする建築スタジオ「LANZA atelier(ランサ・アトリエ)」が、ロンドンのケンジントン・ガーデンズに設営されるサーペンタイン・パビリオンの設計者に選出された。イサベル・アバスカルとアレッサンドロ・アリエツォによって設立された同スタジオが手掛ける今回のパビリオンは、「a serpentine(ア・サーペンタイン)」と冠されている。本プロジェクトは、2000年に開始されたパビリオン委託の25周年という節目にあたり、これを記念してザハ・ハディド財団との特別パートナーシップのもとで実施される。これは、初代パビリオンを設計したザハ・ハディドの革新的な精神を継承し、建築における実験的な試みをさらに深化させるものである。
建築コンセプトと歴史的背景
今回の設計においてLANZA atelierが着想を得たのは、英国の庭園建築に伝統的に見られる「サーペンタイン・ウォール(蛇行壁)」あるいは「クリンクル・クランクル・ウォール」と呼ばれる手法である。この曲線を描くレンガ壁は、古代エジプトに起源を持ち、後にオランダの技術者によって英国に伝えられた。波状の幾何学的な形状は、構造的な安定性を高めるための合理的な仕組みであり、直線的な壁よりも少ないレンガの量で自立させることが可能である。この形態は、付近にあるサーペンタイン湖の緩やかな曲線とも共鳴し、周辺の景観との調和を図ると同時に、建築を通じた対話を促す装置として機能する。
物質性と空間の透過性
LANZA atelierは、英国の庭園の伝統を尊重しつつ、既存のサーペンタイン・サウス・ギャラリーのレンガ外装との対話を促すために、主要素材としてレンガを選択した。リズムカルに配置されたレンガの柱は、壁を不透明な境界から透過性のある構造へと変容させ、光と風が空間を通り抜けるように設計されている。柱の上に軽やかに載せられた半透明の屋根は、林のような雰囲気を醸成し、囲いと開放感の境界を和らげる効果をもたらす。この構成は、建築と自然、そして都市の公共空間が交差する新たな閾(しきい)を創出している。
設計手法と専門的背景
2015年に設立されたLANZA atelierは、日常やインフォーマルな状況の中に生まれる空間的知性に焦点を当てた活動を展開している。彼らの設計プロセスは、ドローイングや模型制作といった身体的な手作業を重視しており、それらを形や構造を思考するための能動的な道具として位置づけている。今回の選出は、2018年のフリーダ・エスコベドに続き、メキシコの建築家として2例目となる。同スタジオは、建築を単なる構造物ではなく、人々の動きを形作り、リズムを調整し、他者との遭遇を生み出すための「集合的経験の場」として捉えている。
25周年記念プログラムと学術的展開
パビリオンの公開期間中、この空間は音楽、映画、演劇、文学、哲学、テクノロジーといった多角的なイベントのプラットフォームとして活用される。また、25周年を記念したザハ・ハディド財団との協力により、建築の未来を考察する専用のプログラムも実施される予定である。さらに、パビリオンの設営に合わせてLANZA atelierにとって初となるモノグラフ(単行書)が、エスタジオ・エレラによるデザインで出版される。この書籍には、芸術家や詩人らによる寄稿が収められ、彼らの建築思想をより広範な文化的文脈の中で検証する内容となる。
公開日程およびアクセス情報
2026年サーペンタイン・パビリオンは、ロンドンのケンジントン・ガーデンズ内、サーペンタイン・サウスにて公開される。主な日程は以下の通りである。
プレス内覧会:2026年6月3日(水)午前8時30分から午後12時まで
一般公開期間:2026年6月6日から10月25日まで

