サイフ・アズーズ、初の美術館個展で土地と水の私有化を問う

Saif Azzuz at Blaffer Art Museum
Saif Azzuz at Blaffer Art Museum. Photography by Francisco Ramos

ヒューストン発 — アーティスト、サイフ・アズーズ氏が、自身初となる美術館での個展「Keet Hegehlpa’ (水が満ちてくる)」をブラッファー美術館で開催している。本展は、入植者植民地主義のシステムにおける土地、水、天然資源の私有化に対し、鋭い問いを投げかけるものだ。

アズーズ氏(1987年、カリフォルニア州パシフィカ生まれ)は、現在ヒューストンと呼ばれる土地にまつわる神話や起源の物語、そして捏造された話を参照し、多様なメディアを駆使して作品を制作。今回の展覧会では、この土地ならではのインスタレーション、絵画、アッサンブラージュ(立体作品)が展示されている。

展覧会のタイトル「Keet Hegehlpa’」は「水が満ちてくる」を意味する。アズーズ氏は、19世紀初頭に出回ったアレン兄弟の広告のような歴史的資料を引用する。これらの広告は、バッファロー・バイユーとして知られる牧歌的なヨーロッパ風の小集落を描き、入植者たちにサナ族、アタカパ・イシャク族、アコキサ族、カランカワ族の未譲渡の土地の購入と占有を促した。アズーズ氏は、こうした歴史的な偽りの表現に応答し、盗まれた土地の支配と、それがもたらす現実について絵画やアッサンブラージュを通して表現している。

本展では、アズーズ氏の家族であるルル・スローワー、エリザベス・アズーズ、ヴィオラ・アズーズ、モヤ・アズーズ、コリーン・コールグローブも参加。彼らは生態学的な知識を基に、土地の管理と先住民の女性たちが中心となる土地の権利回復の実践の歴史を視覚化する。これは、アニシナベ族の作家ジェラルド・ヴィゼナーが提唱した「サバイバンス(抵抗と生存の融合)」という概念にも通じるものだ。

アズーズ氏は、歴史の記録や物質的な歴史の中に存在する、作為的なフィクションに着目する。綿密な調査を通じて、土地や身体における主体性の喪失につながる、一見無関係に見える歴史的プロセスを突き止め、異なるコミュニティ間に共通する脆弱性や矛盾を浮かび上がらせる。彼の作品は、先住民コミュニティを支配し、強制的に移住させようとする継続的な試みに対する抵抗の戦略を提示し、人間とそれ以外のすべての存在における生命の、絶えることのない相互の繋がりを浮き彫りにしている。

アズーズ氏は2013年にカリフォルニア美術大学で絵画とドローイングの学士号を取得。2022年にはサンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)のSECA賞のファイナリストに選ばれるなど、現代アートシーンで注目を集めている。

「Keet Hegehlpa’ (水が満ちてくる)」展は、ブラッファー美術館にて2025年12月20日まで開催中。

Saif Azzuz
Saif Azzuz. Photography by Chris Grunder

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