ブラック・ミラー: ユーロジー
ブラック・ミラー: ユーロジー

「ユーロジー」- ブラックミラー シーズン7 第5話:忘れ去られた記憶を紐解く

ポール・ジアマッティ主演の「ユーロジー」は、今シーズンの作品の中でも、最も個人的で内密な物語として際立っている。テクノロジーによって蘇る偽りの記憶の中で、失われた愛が真実を明らかにする感動的なドラマだ。  

これまでのエピソードとは一線を画し、シリーズ初期の頃を彷彿とさせる作風となっているのも特徴だ。 このエピソードの独特な感性に浸るには、一旦日常から離れ、心を落ち着けて、記憶を偽ってきた男の愛の物語、そして彼が真実と向き合う姿をじっくりと見届ける必要がある。  

あらすじ  

主人公のフィリップは孤独な男。彼のもとに、ある女性の訃報が届く。 最初は誰のことか思い出せないフィリップだったが、写真を通して記憶を呼び起こす革新的な発明によって、忘れ去られていた記憶の扉が開かれていく。 かつて愛した女性の娘という特別な案内人に導かれ、彼は徐々に過去の出来事を鮮明に思い出していく。  

ブラック・ミラー: ユーロジー
ブラック・ミラー: ユーロジー

エピソードについて  

ポール・ジアマッティの演技は、間違いなくこのエピソードの大きな魅力の一つだ。 一方で、SF的な奇抜さやファンタジーを前面に押し出した作品ではない。 「ユーロジー」が焦点を当てているのは、記憶そのもの、そしてテクノロジーを通して、私たちがどのように愛おしい、あるいは辛い過去と再び向き合うことができるのかという点だ。 それらの経験は、私たちの人生を形作るかけがえのない一部なのである。  

「ユーロジー」は、フィリップの人生、そして彼が愛した人と共に過ごした三年間の歳月を辿る物語だ。 暴力的描写はなく、感情豊かで穏やかな時間が流れる。 劇的な展開や大きなサプライズがあるわけではないが、落ち着いたペースで、丁寧に物語が紡がれていく。  

映像は、デジタル時代以前の古き良き映画を思わせるトーンで、美しい。 このエピソード全体が、かつてネガフィルムから焼き増しされていた写真へのオマージュとなっているかのようだ。 物語の展開も、写真の現像プロセスを彷彿とさせる。最初は隠されていたものが、案内人の助けによってネガが現れ、やがて一枚の写真として、つまりより身近な記憶として浮かび上がってくるのだ。  

派手な特殊効果を期待する人には、物足りないかもしれない。 登場人物が写真の中に入り込むシーンで多少のCGが使われているが、このエピソードはそういった視覚的な派手さを求めていない。  

シーズン7の中で、現時点で最高のリズム感を持つエピソードと言えるだろう。 ポール・ジアマッティ演じる主人公と共に、痛みを伴いながらも美しい時間旅行を体験する覚悟をしてほしい。

「ユーロジー」の視聴場所

Netflix

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