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『Kill Me If You Dare』レビュー:ブラックコメディ、後半で失速

Martin Cid
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ナタリア(ヴェロニカ・クションシュキェヴィチ=ナタニエル)とピョトル・ロズヴァドフスキ(マテウシュ・バナシウク)が、当選した宝くじに気づいた瞬間、カメラは二人の顔をじっと映し出す。そこに浮かぶのは、驚きと高揚感、そしてどこか不穏なものが入り混じった表情だ。これこそが『Kill Me If You Dare』の提示するもの――お金がどれほど強固な関係さえも崩してしまうのかを描く、ブラックな笑いに満ちた物語である。フィリプ・ジルベル監督によるポーランドのロマンティックコメディで、トルコ映画『Öldür Beni Sevgilim』のリメイク作。時代を超えて通じる題材を、いまの時代にも響く形でNetflixに届ける。

『Kill Me If You Dare』の前半は、鋭いユーモアと小気味よいテンポで、その設定をしっかりと生かしている。ロズヴァドフスキ夫妻が互いを疑い始める展開は、笑えると同時に不穏でもある。クションシュキェヴィチ=ナタニエルとバナシウクは、現代版のニックとノラ・チャールズさながらに息の合った掛け合いを見せるが、その裏にははるかに暗いものが潜んでいる。とりわけ印象に残るのは、二人が事故を装おうとする場面だ。ところが、手際の悪い試みは次第にドタバタの混乱へと転じていく。主演二人の相性は際立っており、その演技が前半の勢いを支えている。

ところが後半に入ると、映画はつまずき始める。序盤にあった緊張感とユーモアはしぼみ、予想のつく展開や物足りない種明かしが続く。序盤では長所だったテンポも不安定になり、重要な場面が性急に流されたり、掘り下げ不足に感じられたりする。ナタリアの妹アガタ(アグニェシュカ・ヴィエンドウォハ)と、ピョトルの友人ウカシュ(ピョトル・ログツキ)をめぐるサブプロットも、物語にほとんど寄与しない。中心となるテーマを意味深く掘り下げるというより、かえって本筋から注意をそらしている。

おなじみの定番に頼りすぎている点も、作品の独自性を損なっている。ブラックコメディという切り口は当初こそ新鮮だが、ほどなくありきたりな展開の連続に陥ってしまう。サウンドトラックは耳障りではないものの、感情が動く場面を盛り上げることも、笑いの間合いを引き立てることもできていない。撮影も手堅くはあるが、物語に映像的な華やかさを添えるような際立った場面は見当たらない。

こうした難点はあるものの、『Kill Me If You Dare』には光る瞬間もある。脚本が失速しても、クションシュキェヴィチ=ナタニエルとバナシウクの演技は一貫して見応えがある。心からの愛情から冷徹な計算まで、幅広い感情を表現する二人の力が、作品を最後まで見られるものにしている。また、強欲や信頼、そして人間関係を蝕むお金の影響といったテーマを扱っている点も、いまの時代に即している。

アガタ役のアグニェシュカ・ヴィエンドウォハ、ウカシュ役のピョトル・ログツキをはじめとする脇役陣も堅実な演技を見せるが、結局は十分に生かされていない。彼らの人物像は平板で、血の通った人間というより、筋書きを動かすための装置にとどまっている。主演陣との関係性を深く描けていれば、物語に厚みを加えられたはずであり、その点は惜しまれる。

ジルベルの演出は手堅いものの、素材を一段上へ引き上げるような独自の持ち味には欠ける。ユーモアも、繊細で人物に根ざしたやり取りより、大ぶりな笑いに頼りすぎている。テンポの問題はとりわけ後半で目立ち、設定がもたらす結果を十分に掘り下げないまま、結末へ急いでいるように見える。

『The Death of Stalin』や『Game Night』といったほかのブラックコメディと比べると、本作の弱点が浮き彫りになる。これらの作品が笑いと緊張感を巧みに両立させているのに対し、『Kill Me If You Dare』はその均衡を見つけられずにいる。トーンの変化も自然につながらず唐突で、観客は笑えばいいのか、気まずさを覚えればいいのか戸惑うことになる。

ジャンルという観点では、『Kill Me If You Dare』はコメディとロマンスの境界に立ちながら、どちらにも振り切れていない。ロマンティックな要素は後付けのように感じられ、笑いを狙った場面も空振りに終わることが多い。ジャンルとしての軸が定まらないことが、作品全体の印象を弱めている。

本作のテーマが現代社会に深く関わるものであることは間違いない。経済的な不安を切実な問題として抱える人が多い、今日の社会においてはなおさらだ。しかし、その描き方は期待に届いていない。強欲や信頼をめぐる物語は、人物造形をより深め、会話にもさらに工夫を凝らすことで、いっそう繊細なものになったはずだ。

ブラックコメディやロマンティックドラマが好きな人にとって、『Kill Me If You Dare』には楽しめる場面もあるが、最終的には満足のいく体験を届けられていない。主演陣の演技と時宜を得たテーマは本作の強みだが、テンポの悪さ、予測しやすい展開、独自性の不足がそれを覆い隠してしまう。

結局、『Kill Me If You Dare』は良いところと惜しいところが混在する作品だ。魅力的な設定と優れた演技で力強く始まるものの、後半ではその勢いを保てない。

キャスト

写真:The Movie Database (TMDB)

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