映画

『Moonshot』――魅力的だがムラのあるSFロマンス

Molly Se-kyung
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Moonshotの冒頭を飾るのは、赤錆色に染まった火星の地表をとらえた壮大なショットだ。地球の豊かな緑との鮮烈な対比は、この映画の核となるテーマを映し出す。愛に境界はない。惑星の境界さえも。クリストファー・ウィンターバウアー(Christopher Winterbauer)監督、マックス・タクセ(Max Taxe)脚本によるSFラブコメディで、コール・スプラウス(Cole Sprouse)とラナ・コンドル(Lana Condor)が、恋人との再会を目指して火星行きのシャトルに密航する大学生、ウォルトとソフィーを演じる。

Moonshotの魅力は、気の利いた掛け合いと、心に響く感情描写のバランスにある。スプラウスとコンドルの息の合った演技が、荒唐無稽にも思える設定に人間らしい切実な思いを吹き込んでいる。なかでも印象的なのは、狭いシャトルの船室でウォルトとソフィーが静かなひとときを過ごす場面だ。無機質な空間に二人の笑い声が響き渡り、壮大なSFの設定のなかにも人間味が息づいていることを、ささやかながら効果的に思い出させる。とりわけ、風変わりな科学者レオン・コヴィを演じるザック・ブラフをはじめ、脇を固めるキャストもユーモアと温かみを加えている。

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一方、2022年公開のMoonshotは、テンポと構成に難がある。前半は火星の未来型コロニーや、地球で送る主人公たちの日常を描くのに時間をかけすぎており、壮大な設定のわりに危機感が乏しい。ウォルトとソフィーがシャトルに乗り込んでからは物語も軌道に乗るものの、火星への旅は駆け足で進み、ほかの乗客にまつわるサブプロットも掘り下げ不足だ。ウォルトとソフィーの恋愛にも、The MartianやPassengersのような作品を引き込む、じっくりと燃え上がる過程が欠けている。二人のつながりは、積み重ねの末に生まれたというより、唐突に感じられる。

映像面では、Moonshotの出来にはばらつきがある。火星のコロニーやシャトルのプロダクションデザインは見事で、未来的で洗練された美学が、現実味と幻想性をうまく両立させている。しかし、火星の地表を描く一部のCG映像は古びて見え、観客を物語の没入感から引き離してしまう。また、宇宙空間の静寂を生かした音響設計も注目に値する。孤立感を際立たせ、登場人物たちの心の旅路を浮き彫りにしている。

演技では、コール・スプラウスが、心優しいバリスタのウォルトを魅力的かつ親しみやすく演じている。宇宙船への密航というばかばかしい状況に立ち向かう場面では、コメディセンスも光る。ソフィー役のラナ・コンドルは、知性と脆さを併せ持つ人物像を表現し、当初の冷淡な態度にもかかわらず、共感できるキャラクターに仕上げた。スプラウスとコンドルの相性の良さは本作最大の強みであり、作品の感情的な重みの多くを支えている。

クリストファー・ウィンターバウアーの演出は手堅いものの、SF要素を取り入れたほかのラブコメディを超えるほどの独自のビジョンには欠けている。コメディ場面のさばきは安定している一方、ドラマ性の強い場面では演出にむらが見られる。テンポの問題からは、物語をより引き締め、一貫性と見応えのある作品にするために、ウィンターバウアーがさらに手を入れる余地があったことがうかがえる。

テーマとしては、文字どおりの境界も比喩的な境界も越えていく愛を描いている。人類の新たなフロンティアとして火星をテラフォーミングするという設定は、登場人物それぞれの個人的な旅路を支える背景となる。しかし、こうしたテーマは深く掘り下げられず、しばしば恋愛のサブプロットに添えられた後付けの要素のように感じられる。別の惑星を植民地化することに伴う倫理的・感情的な複雑さを、より繊細に検討していれば、本作はさらに豊かな作品になっただろう。

The MartianやPassengersと比べると、Moonshotは見劣りする。SFの舞台設定とロマンスという共通点はあるものの、そうした作品を魅力的にしている深みや緊張感が足りない。たとえばThe Martianは、ユーモアと命がけのサバイバルを、推進力のある物語のなかで両立させている。一方、Passengersは登場人物たちの行動がもたらす道徳的なジレンマに踏み込んでいる。それに対してMoonshotは、宇宙を舞台にした軽めのラブコメディという印象が強く、このジャンルで存在感を示すだけの中身に欠けている。

観客の好みという点では、気軽に楽しめるロマンティックコメディを求める人には響くだろう。しかし、より充実したSF体験や、テーマを深く掘り下げた作品を期待する人には物足りないかもしれない。ユーモアと主演二人の相性の良さは本作の大きな売りだが、それだけで競合作品を上回るには至らない。

総じてMoonshotは、SFの装いをまとった、魅力はあるものの欠点も目立つラブコメディだ。主演二人の相性の良さや脇役たちのユーモアを生かした場面では成功しているが、複数のサブプロットをまとめ、描き込みの足りない恋愛を成立させようとするところでつまずいている。

キャスト

写真:The Movie Database (TMDB)

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