AI

Project Suncatcher、Googleは太陽光でGeminiを15分ずつ動かす

Susan Hill
Googleで追加する

GoogleとPlanetが開発した冷蔵庫ほどの大きさの衛星「MVP」は、Trillium世代のTPU4基を軌道へ運び、太陽光発電でGeminiを動かす。チップが続けて働けるのは約15分で、その後は停止して熱を逃がさなければならない。この制約こそが、実験の本当のテーマである。

Googleが初めて打ち上げる人工知能(AI)衛星は、稼働期間の一部をあえて電源を落として過ごすことになる。Project Suncatcherの最初の機体となるMVPはTensor Processing Unit(TPU)4基を搭載し、Geminiモデルを約15分間動かしたあと停止する。ラジエーターが熱を宇宙空間へ放出し終えるのを待ち、再び動き出す。この休止は技術的な注記のように聞こえるが、Googleが衛星を打ち上げてまで確かめようとしている問いそのものである。

Project Suncatcherは、AIを支える電力を、家庭や病院、工場が頼るのと同じ電力網ではなく、軌道上で集めた太陽光から直接まかなえるかを探るGoogleの研究プロジェクトだ。MVPはその枠組みで飛ぶ初めてのハードウェアである。地球観測衛星の保有数で世界最大級を誇るサンフランシスコの企業Planetと共同で製造した機体は冷蔵庫ほどの大きさで、太陽電池パネルから約1キロワットの電力を得る。搭載チップ4基はTrillium世代に属し、地上にあるGoogleのデータセンターでGeminiへのリクエストに応えているのと同じTPUファミリーだ。

予定どおりに進めば、MVPは10月1日、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地からSpaceXのファルコン9(Falcon 9)で打ち上げられる。多数の小型ペイロードが相乗りするライドシェアミッション「Transporter-18」の一つとしての飛行だ。Googleはこの打ち上げを異例なほど控えめに位置づけている。打ち上げを数日後に控え、同社は「宇宙でしか試せないことがある」としたうえで、「来週、最初のTPUを軌道に投入することで、今後の打ち上げに生かすデータと知見を得られる」と述べた。付随する製品はなく、結果を待つサービスもない。地上に戻ってくるのは測定データである。

太陽がほとんど沈まない場所で計算する理由

宇宙へ向かう理由は太陽光にある。Google自身の研究によれば、適切な軌道に置かれた太陽電池パネルは、地上の同じパネルに比べて最大8倍の発電量を得られる。雲も天候もなく、夜もほとんど訪れないためだ。Suncatcherが前提とするのは、昼と夜の境界線に沿って周回する「ドーン・ダスク太陽同期軌道」で、宇宙機はほぼ常に太陽を見続けられる。各周回の暗い区間を乗り切るための重いバッテリーも減らせる。バッテリーは質量であり、宇宙飛行で最も高くつくのはその質量なのだ。

この構想を後押しする圧力は、地上を見れば明らかだ。AIモデルは世代を重ねるたびにより多くの計算を求め、それを支えるために建設されるデータセンターには、送電網への接続、土地、冷却のための水やそれに代わる手段、そして自らの電気料金を気にする地域住民の理解がますます必要になっている。国際エネルギー機関(IEA)は2025年、世界のデータセンターの電力消費量が2020年代末までに2倍を超え、約945テラワット時(TWh)に達する見通しだと推計した。増加の主な要因はAIだという。

大手テック企業は電力の争奪戦で応じている。GoogleはKairos Powerが開発する小型モジュール炉(SMR)から電力を購入する契約を結んだほか、NextEra Energyと組み、アイオワ州で停止していたデュアン・アーノルド原子力発電所を再稼働させることでも合意した。Microsoftはペンシルベニア州スリーマイル島の原子炉1基の再稼働で合意し、Amazonは原子炉開発企業X-energyに出資している。いずれも実現までに何年もかかり、許認可や地域の政治に左右され、誰もが欲しがる送電容量を奪い合う。Suncatcherは同じ探求の最も急進的な形であり、地上でさらに電力を探すのではなく、太陽光がほとんど途切れない場所へ行こうというのである。

冷蔵庫サイズの衛星、電力は電子レンジ並み

現時点では、野心はあえて小さく抑えられている。MVPの太陽電池パネルが供給する電力は約1キロワットで、電子レンジ1台の消費電力とほぼ同じだ。4基のチップを合わせた計算能力も、地上のデータセンターにあるサーバー1台分程度にとどまる。地球上の最大級のAIキャンパスは数百メガワット規模で計画されており、計算上、100メガワットの施設1つを賄うにはMVPのような衛星10万機分の電力が必要になる。Googleはこのミッションを、より大きな計算が意味を持つ前に答えておくべき素朴な問いと位置づける。自社のAIハードウェアは、そもそも宇宙で動作するのか。

MVPは、プロジェクトが当初の発表より速く進んでいることの表れでもある。Googleが2025年11月にSuncatcherを発表した際の計画は、Planetとの学習ミッションとして2027年初頭までに試作衛星2機を軌道に投入するというものだった。MVPはその2機に先駆けて打ち上げられ、役割はより限定的だ。Googleがより複雑なハードウェアに踏み切る前に、打ち上げ時の負荷、宇宙放射線、低軌道特有の激しい温度変化のもとでTPUがどう振る舞うかについて、実データを集めることにある。

Trilliumは2024年5月に発表され、同年中にクラウド顧客への提供が始まったGoogleの第6世代TPUである。Googleはその後、大規模モデルを大量に運用するために設計した第7世代「Ironwood」を発表している。最初の試験に一世代前のチップを飛ばすのには実務的な理由がある。地上で特性が徹底的に把握されているため、軌道上で挙動に変化が出れば、なじみのないシリコンではなく環境に原因を求められるからだ。

Planetとの提携には経緯がある。Googleは2017年、かつてSkybox Imagingの名で知られた衛星画像事業Terra BellaをPlanetに売却し、その取引の一環として同社の株式を取得するとともに、複数年にわたる画像購入契約を結んだ。元NASAの科学者らが2010年に創業したPlanetは、10年以上にわたり小型衛星群を製造・運用してきた。衛星をつくり、軌道上で生かし続け、地上から交信するという宇宙機側の仕事はPlanetが担い、Googleはチップとモデル、そして問いを持ち込む。この分業は、GoogleがSuncatcherを当初から、打ち上げのたびに学び、そのうえで次に進む研究と説明してきたことと一致している。

放射線は意外にも易しい問題だった

地上試験の結果は、ある程度の楽観を裏付けている。Googleはロケットでの飛行を模して、ハードウェアを3軸すべての方向に揺さぶった。その間、個々の部品には50〜100gがかかることがある。さらにTrillium TPUをカリフォルニア大学デービス校(UC Davis)のクロッカー原子核研究所(Crocker Nuclear Laboratory)に持ち込み、AIワークロードを実行させながら67 MeVの陽子ビームを照射して、ビット反転などのエラーを監視した。GoogleのParadigms of Intelligenceチームでシニアディレクターを務めるトラビス・ビールズ(Travis Beals)氏によると、チップは5年間のミッションで吸収する線量を上回る総線量に耐えたという。

公開された数値は、この要約よりさらに踏み込んでいる。Googleの研究論文は、5年間のミッションで想定される線量を750 rad(Si)としている。最も影響を受けやすい部品である高帯域幅メモリーに異常が出始めたのは2 krad(Si)を超えてからで、想定線量のほぼ3倍にあたる。プロセッサーは想定の20倍となる15 krad(Si)まで試験され、蓄積した放射線に起因するハード故障を起こしたチップは1つもなかった。とはいえ、宇宙がコンピューターにとって無害になるわけではない。個々の粒子がチップに当たって生じるシングルイベントアップセット(SEU)と呼ばれるエラーは、引き続きソフトウェアとメモリーの側で検出し、訂正しなければならない。

この結果が重要なのは、放射線に対する宇宙業界の伝統的な答えが、遅くて高価だからだ。NASAの探査車キュリオシティやパーシビアランスに搭載されたRAD750のような耐放射線プロセッサーは、過酷な環境で長年生き延びるように作られているが、処理速度は最新の商用チップのごく一部にすぎず、価格ははるかに高い。市販のコンピューターが宇宙を飛んだ例はこれまでにもあり、ヒューレット・パッカード・エンタープライズが2017年に国際宇宙ステーションへ送ったSpaceborne Computerはその一つだ。Googleの数値は、特殊な製造工程ではなく誤り訂正によって守られた商用AIアクセラレーターでも、軌道上の仕事に十分耐えうる可能性を示している。

15分ごとに突きつけられる熱という請求書

より難しいのは熱であり、15分という制限がそれをはっきり示している。地上のデータセンターは、空気を吹き付けたり水を循環させたりしてチップから熱を運び去り、施設の設計の多くはその仕事を中心に組み立てられている。真空中には対流で熱を運ぶ空気がない。そのためMVPはアルミニウムと銅のヒートパイプで熱をラジエーターへ導くが、ラジエーターは赤外線としてしか熱を放出できない。

ここでは物理法則が容赦ない。ラジエーターが放出する熱量はその表面積と温度の4乗に比例するため、より多くの熱を捨てるにはラジエーターを大きくするか高温にするしかないが、チップは高温での動作を好まない。国際宇宙ステーションは、アンモニアの循環ループにつながった大型の外部ラジエーターパネルで同じ問題に対処している。MVPほど小さな宇宙機では、チップが熱を生む速度がラジエーターの放熱速度を上回る。だからチップは熱の限界に近づくまで働き、そこで待つ。稼働時間が1分延びるごとに、熱設計の出来がそのまま測れることになる。

熱管理は、本格的な軌道上データセンターに向けてGoogleが挙げる課題の一つにすぎない。実際のシステムには、利用者のいる地上へ遅延を問題にすることなく結果を送り返す高帯域幅の通信リンクも必要になる。誰も交換できない部品で動き続けなければならない点も課題だ。地上でサーバーが故障すれば技術者が取り替えるが、軌道上で故障すれば壊れたままになるため、設計はハードウェアが少しずつ確実に失われていくことを前提にしなければならない。さらに、現在よりはるかに安い打ち上げ価格も欠かせない。Googleはプロジェクトの費用を明らかにしていない。

すべてを左右する1キログラムの値段

構想の成否を分けるのは、この最後の点だ。過去の打ち上げ価格の下落傾向を将来に延長したGoogleの分析は、打ち上げ費用が1キログラムあたり200ドルを下回って初めて、軌道上の計算が地上のデータセンターのエネルギーコストとおおむね肩を並べると結論づけた。Googleは、それが2030年代半ばごろに実現する可能性があるとみている。現在のライドシェア価格ははるかに高く、MVPが利用するSpaceXのTransporterプログラムは、小型衛星向けに1キログラムあたり数千ドルという料金を提示してきた。この差を埋められるかどうかは、SpaceXのスターシップ(Starship)のような完全再使用型の大型ロケットが、開発者の約束するコスト曲線を実現できるかにかかっている。

この時期の見通しが、プロジェクト全体の性格を物語っている。Suncatcherは来年の製品計画ではなく、10年後のロケット産業の姿に賭けたものだ。Googleはこれを「ムーンショット」と呼ぶ。のちにWaymoとなった自動運転車の開発や量子コンピューターなど、長期にわたる不確実な挑戦に使ってきた呼び名である。どちらも、顧客が使えるものを生み出すまでに10年以上を要した。

数百メートル間隔で飛ぶ81機の衛星

公開された設計は、野心がどこまで及ぶかを示している。トラビス・ビールズ氏が、ブレーズ・アグエラ・イ・アルカス(Blaise Agüera y Arcas)氏やジェームズ・マニカ(James Manyika)氏らGoogleの研究者とともに名を連ねた論文が想定するのは、1機の巨大な宇宙機ではない。平均高度約650キロメートル、半径1キロメートルの範囲内で編隊飛行する81機の衛星群で、隣り合う衛星の間隔はわずか100〜200メートルだ。これほど接近して飛ぶからこそ、光ファイバーケーブルの代わりにレーザー光で結ばれた1つのデータセンターのように振る舞える。地上の卓上規模の試験では、Googleの研究者が1組の光トランシーバーで片方向あたり毎秒800ギガビット(800 Gbps)、双方向の合計で毎秒1.6テラビット(1.6 Tbps)を達成した。実用的なクラスターには毎秒数十テラビットが必要になる。Googleは2027年、Planetとともに衛星2機を打ち上げ、まさにこのレーザーリンクを軌道上で試験する計画だ。

これほどの密度での編隊飛行は、それ自体が未解決の課題である。低軌道の衛星は希薄な上層大気や地球の不均一な重力によって絶えず押し流されており、81機を密集したクラスターに保つには、自動化された軌道維持を休みなく続ける必要がある。Googleの論文には小さな軌道修正でクラスターを維持できることを示すモデルが含まれているが、単独の宇宙機であるMVPではそれを検証できない。密集したクラスターは、Suncatcher以前からある低軌道の混雑をめぐる議論にも踏み込むことになる。低軌道ではすでに数千機の稼働衛星が空を分け合っており、その大半はSpaceXのStarlinkだ。

Geminiの利用者にとっては、どの市場でもまだ何も変わらない。回答はすべて地上のデータセンターから返ってくる。MVPが生み出すのは新しいサービスではなく工学データだ。今年、衛星と会話する人はおらず、ミッションの結果に左右されるGeminiの機能もない。

雲の上を目指すのはGoogleだけではない

この競争に加わっているのはGoogleだけではなく、AIチップを最初に宇宙へ送ったのもGoogleではない。Nvidiaが出資し、ワシントン州レドモンドに拠点を置くスタートアップStarcloud(旧Lumen Orbit)は、2025年11月にNvidia H100グラフィックス・プロセッサーを搭載した衛星Starcloud-1を打ち上げた。同年12月には、Google DeepMindのオープンモデルGemmaを軌道上で動かし、アンドレイ・カルパシー(Andrej Karpathy)氏が開発した小型言語モデルnanoGPTの学習も行った。中国では、衛星メーカーの国星宇航(ADA Space)と之江実験室(Zhejiang Lab)が2025年5月、「三体計算星座」と名付けたコンステレーションの最初の12機を打ち上げた。すべてのデータを地上へ送るのではなく、軌道上で処理することを目標に掲げている。

Yahoo Financeの報道によると、SpaceXはNvidiaの技術を使った軌道上AIデータセンターの構想を示しており、早ければ2027年末までに打ち上げられる可能性がある。同社の衛星設計AI1は約120キロワットの持続的な計算能力を目標とし、MVPの電力枠の100倍を超える。ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏は10〜20年以内に軌道上にギガワット級のデータセンターが生まれると予測し、OpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)氏も宇宙での計算という構想を支持してきた。信奉者のリストは長いが、実際に動いているシステムは今のところ単独の衛星がいくつかあるだけだ。

Googleが他社と異なるのは、自らチップを設計し、自らモデルを訓練し、世界最大級のデータセンター群を運用している点だ。Suncatcherがうまくいけば、Googleは規模拡大のために他社のプロセッサーに頼る必要がない。チップ4基を積んだ小さな衛星が同社にとって重要なのも、そのためである。MVPが送ってくる測定値の一つひとつが、次のTPUと次の宇宙機の設計に直接反映される。

軌道に入ったMVPはドーン・ダスク太陽同期軌道を飛行し、約1年間タスクを実行する見込みだ。ただしハードウェア自体は、大気圏に再突入して燃え尽きるまで最長6年間軌道にとどまる可能性がある。最初の有用な数値は早い段階で得られるはずだ。チップが打ち上げをどう乗り切ったか、そして稼働と休止の最初のサイクルでどう振る舞うかである。

打ち上げ後に注目すべき数字は、MVPの計算速度ではなく、計算をどれだけ長く続けられるかだ。15分が1時間に向かって延びていけば、軌道上のデータセンターはSFではなく工学の問題に見え始める。延びなければ、AIの電力料金は地上にとどまり続け、その解決策は電力網や発電所、そして地上のより効率的なチップに求めるしかなくなる。

タグ: , , , , ,

Googleで追加する

ディスカッション

0件のコメントがあります。