映画

豪華客船の謎解き、物足りないロマンスに溺れる

Martin Cid Magazine
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クレイジークルーズの冒頭では、吉沢亮演じる優が、MSCベリッシマのきらびやかなデッキを背景に、真っ白で隙のない執事服に身を包んでたたずむ。カメラは船内の豪華な設備をゆっくりと映し出す。磨き上げられた木張りの壁、クリスタルのシャンデリア、そして彼方まで広がるエーゲ海。滝悠介監督による、ロマンティックコメディとミステリーを掛け合わせたNetflix作品の、視覚的にも華やかな幕開けだ。現代版のオリエント急行殺人事件とラブ・アクチュアリーを目指した作品でもある。

物語の設定はシンプルながら、期待を抱かせる。MSCベリッシマに乗船する誠実な執事、浮方優(吉沢亮)は、自分たちには過去に接点があると語る謎めいた女性、盤若千弦(宮﨑あおい)と出会う。偶然の出会いと時を同じくして船内で殺人事件が起こり、意外な組み合わせの二人は、風変わりな乗客たちが行き交う船内で展開する謎解きに巻き込まれていく。本作の強みは美術デザインにある。金色に輝く廊下から広々とした宴会の場面まで、どこを切り取っても豪奢な雰囲気に満ち、海上のエリートたちの世界へと観客を引き込む。ミステリーも物語に巧みに織り込まれ、乗客一人ひとりが秘密を抱えていることで、筋立てに興味を持続させている。

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しかし、2023年のNetflix作品であるクレイジークルーズは、複数のジャンルを同時に扱おうとするところで失速する。優と千弦のロマンスは掘り下げが足りず、ぎこちない視線や歯切れの悪い告白が続くだけで、心に響くために必要な感情の深みがない。ユーモアを狙った場面も空回りしがちで、冗談はエーゲ海に錨を落とすほどの鈍さで着地する。一方、興味を引くミステリーも、テンポの問題を抱えている。重要な真相が急ぎ足で明かされ、クライマックスも唐突で、物足りなさが残る。

千弦を演じる宮﨑あおいは、際立った演技を見せる。弱さとしたたかさの間で揺れる女性を巧みに表現し、物語に待望の奥行きをもたらしている。ひと目で感情を伝える宮﨑の表現力は見どころで、千弦は作品の感情面を支える存在になっている。優役の吉沢亮も同じく魅力的だが、複雑に入り組んだ筋書きのせいで、彼の人物としての変化が見えにくくなることもある。堀川愛菜役の菊地凛子、矢淵初美役の吉田羊をはじめとする脇を固める俳優陣も、それぞれの役に心地よい活気を与えているものの、膨らみすぎた物語のなかで脇に追いやられがちだ。

ロマンス、コメディ、ミステリー、スリラーをひとつにまとめようとする独創性への挑戦は評価できる。だが最終的には、まとまりのある作品というより、さまざまなジャンルを寄せ集めたような印象が勝る。とりわけミステリーの解決は期待外れだ。犯人の行動の動機があまりに分かりにくく、作品を通して積み上げてきた緊張感を損なってしまう。ロマンスも、主演二人の相性が感じられず、描かれる恋が無理やりで説得力に欠ける。

クレイジークルーズは、映像は目を見張るほど美しい一方、物語の出来にはばらつきがある。大きな期待を抱かせながら、それに応えきれず、観終わったあとには機会を生かしきれなかったという思いが残る。美術デザインは間違いなく本作最大の魅力で、物語を彩る贅沢な舞台を作り上げている。しかし、複数のジャンルをうまくまとめ、登場人物を十分に描き出すことができなかったため、心に残る作品にはなりきれない。

滝悠介の演出は手堅いものの、際立った個性に欠ける。豪華客船のきらびやかさを捉える手腕は見事だが、要素のすべてを結びつける一貫した物語を作るところでは苦戦している。テンポにもむらがあり、長引く場面がある一方で、性急に進む場面もある。その結果、まとまりのない鑑賞体験になっている。

テーマの面では、クレイジークルーズは愛や裏切り、自分探しに触れている。しかし、いずれも十分に掘り下げられることはなく、観客には消化不良の感覚が残る。ロマンスとミステリーを融合させる試みは野心的だが、最終的には両ジャンルが補い合うどころか衝突し、期待に届かない。

想定される観客層を考えると、クレイジークルーズは恋愛ドラマや殺人ミステリーのファンには受け入れられるかもしれない。一方、王道のロマンティックコメディや、筋立ての緻密なスリラーを求める人は、期待を裏切られたと感じる可能性がある。ジャンルをまたぐ作りのため、特定の観客層に強く訴えかけるのが難しく、それが最終的には本作の弱点となっている。

本作には独創性の不足という問題もある。舞台設定や発端には興味をそそられるものの、物語そのものは既視感が強く、恋愛ものとミステリーの両方で定着したお決まりの展開に大きく頼っている。新鮮さに欠けるため、作品がひしめくなかで存在感を示すのは難しい。

欠点はあるものの、クレイジークルーズにも見どころはある。宮﨑あおいと吉沢亮の演技は力強く、美術デザインも間違いなく見事だ。しかし、こうした長所だけでは、より大きな欠点を乗り越えて作品を引き上げるには足りない。

結局のところ、クレイジークルーズは多くを盛り込もうとしながら、成し遂げたことは少ない作品だ。映像は目を見張るほど美しいが、物語の運びにはむらがあり、観客に物足りなさを感じさせることになりそうだ。

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写真:The Movie Database(TMDB)

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