映画

『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』――童話をひねった巧妙なミステリー

Martin Cid
Googleで追加する

シャンデリアの光を浴びて、王宮の大広間はきらびやかに輝いていた。けれど、赤ずきんは踊りに来たのではない。彼女には果たすべき使命があった。福田雄一監督の『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は、こうして意表を突く展開で幕を開ける。おなじみの役柄から童話の登場人物たちを引き離し、奇想天外でありながら謎めいた犯罪ミステリーの世界へと放り込むのだ。

福田監督の本作は、ファンタジー、コメディ、犯罪ミステリーを掛け合わせた作品で、赤ずきん役の橋本環奈と、シンデレラ役の新木優子が主演を務める。筋立てはシンプルながら、興味をそそる。王宮の舞踏会に出席した赤ずきんは、真夜中の鐘が鳴るまでに解き明かさなければならない謎に巻き込まれていく。この設定によって、福田監督は観客の予想を巧みに裏切り、語り尽くされた物語に新鮮な息吹を吹き込んでいる。

YouTube video

赤ずきんを演じる橋本環奈は、好奇心と決意をあわせ持つ姿をいきいきと表現し、存在感を発揮している。彼女の演技は本作の見どころのひとつで、幻想的な世界に親しみやすい人間味を与えている。橋本が演じる赤ずきんには細やかな陰影があり、幼さの残る無邪気さと、自ら行動を起こす力を少しずつ身につけていく姿が絶妙なバランスで描かれる。物語に受け身で参加するだけではなく、自ら筋書きを前へと動かしていく、魅力的な主人公だ。

新木優子演じるシンデレラもまた、受け身の王女というお決まりの型から大きく離れた、印象的なキャラクターだ。新木はシンデレラに鋭い機知と機転の利く力を与え、ただ助けを待つだけのヒロインではない存在にしている。橋本と新木の間には確かな相性のよさがあり、ふたりの関係が作品の感情面の中心となっている。互いを尊重し、支え合うその姿は、昔ながらの童話の物語とはひと味違う新鮮さをもたらす。

脇を固めるキャストも、物語に奥行きと笑いを加えている。岩田剛典演じるギルバート王子は、どこか頼りない愛嬌でコミカルな場面を担い、桐谷美玲演じるテクラは、控えめながらも効果的な演技で、物語の底に流れる不穏な気配をほのめかす。アン役の渡辺夏菜、マルゴ役の若月佑美もアンサンブルに加わり、それぞれが独自の視点を持ち込んで謎を彩る。

福田監督の演出は視覚的にも楽しく、鮮やかな色彩や工夫を凝らしたセットが、童話の雰囲気をいっそう引き立てている。とりわけ注目したいのは照明の使い方だ。印象的な影と光が緊張感やサスペンスを際立たせる。なかでも、城の庭園を駆け抜ける追跡シーンは見どころのひとつ。流れるようで躍動感のあるカメラワークが、場面に満ちた切迫感をとらえている。

音響設計も見事だ。時計の針が刻む音やドレスがこすれる音といったさりげない仕掛けが、物語を進める効果的な演出として機能している。映像に寄り添う音楽も、オーケストラの響きに現代的なビートを組み合わせ、幻想的でありながらサスペンスを感じさせるサウンドトラックを作り上げている。

ただし、『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』はプロットの運びに難がある。設定こそ魅力的だが、物語はところどころで断片的に感じられ、福田監督が人物描写と謎解きのどちらを優先するのか決めかねているようにも見える。展開のペースにもむらがあり、重要な事実が明かされる場面は急ぎ足だ。脇役の登場も遅く、物語に大きな影響を与えるには至らない。

ファンタジー、コメディ、犯罪ミステリーというジャンルの融合は意欲的だが、常にうまくかみ合うわけではない。せっかくの緊迫した場面も、笑いを狙ったやりとりによって緊張がそがれることがある。赤ずきんと王子の気の利いた応酬のように、うまく決まる冗談もある一方で、空振りに終わるものもあり、物語の流れを乱してしまう。

本作が描くアイデンティティと既成概念への挑戦は興味深い。童話の定型に当てはめられてきた登場人物たちが、役割の枠から踏み出したとき何が起きるのかを探っている。伝統的な物語が見直され、再解釈されることの多い現代の文化状況を考えても、とりわけ意義のあるテーマだ。ただ、その主題が必ずしも十分に掘り下げられているわけではなく、作品がやや表面的に感じられる場面も残る。

『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は、童話の翻案作品やミステリーが好きな人なら、どちらの層にも楽しめる一本だ。独自の設定と実力あるキャストは観る価値を感じさせ、物語面の弱点を補っている。出演者たちの演技と、映像で物語を語る力にこそ本作の魅力があり、心から楽しく、好奇心をかき立てられる瞬間を生み出している。

ほかの童話翻案作品と比べられるのは避けられないが、『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』はコメディと犯罪ミステリーを組み合わせることで、独自の立ち位置を築いている。『Into the Woods』のように洗練された作品の高みに届くとはいえないかもしれない。それでも、数ある作品の中でひときわ目を引く、新鮮な視点を提示している。

本作が想定する観客は、気軽に楽しめるミステリーや、童話を大胆に読み替えた作品が好きな人だろう。正統派のミステリーを求める人にはコメディ要素が気になるかもしれず、まっすぐなファンタジー冒険譚を期待する人は、犯罪ミステリーの筋立てに物足りなさを覚える可能性がある。それでも、ジャンルの融合や古典的な物語へのひねりを楽しめる観客なら、『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』に見どころをたくさん見つけられるはずだ。

技術面では、丁寧に作られているものの、革新的とまではいかない。映像は見栄えがよく、演技も力強いが、脚本はもっと整理し、焦点を明確にできたはずだ。展開のテンポに難があることも目立つ欠点で、作品全体を観る体験を損なっている。

欠点はあるものの、『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』には確かな可能性が感じられる。福田監督のビジョンは明快で、才能あるキャストを集める力も申し分ない。脚本の焦点を絞り、編集を引き締めていれば、童話翻案というジャンルを代表する作品になっていたかもしれない。

結論として、『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は、光る部分と惜しい点が同居する作品だ。

キャスト

写真:The Movie Database (TMDB)

タグ: , , , , ,

Googleで追加する

ディスカッション

0件のコメントがあります。