映画

白昼夢の陰謀が『仮面ライダーゼッツ』を逃亡劇に変える

Molly Se-kyung

ヒーロー番組はふつう、主人公の勝利で幕を閉じる。だが本作は、主人公が逃げるところから始まる。テレビシリーズ『仮面ライダーゼッツ』の劇場版は、身に覚えのない政府施設の爆破犯として指名手配された変身ヒーローの姿から幕を開ける。彼の顔は国じゅうの画面に映し出され、世論はすでに“有罪”を確信している。

物語の仕掛けは単純で、そして残酷だ。観客は主人公の無実を知っている。それでも映画は、国民全体が彼を犯人だと信じ込むよう仕向けていく。追跡を指揮するのは、影の組織ではない。バッジと計画を持つ治安当局の人間であり、大衆に“悪役”を与え、その怒りを利用することこそ最短の権力奪取だと見抜いた男である。

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その反転を担うのが、万津莫を演じる今井竜太郎だ。秘密諜報員に憧れる青年が、仮面ライダーゼッツへと変身する。だが最も重要なキャスティングは反対側にある。追跡を操る当局者・玖門宗馬を演じるのは曽野舜太。彼はまた、スパイ技術ではなく“白昼夢”を力とするライバル、仮面ライダー夢現でもある。国が耳を貸さなくなったとき莫が頼るノクス(古川雄輝)が、この三角関係を締めくくる。彼の証人は、体制がすでに切り捨てた二人だけだ。

メガホンを取るのは、近年の劇場版ライダー作品を数多く手がけてきた上堀内佳寿也。脚本はシリーズのメインライターである高橋悠也が担い、作品の核となる発想を崩さない。『ゼッツ』は一貫して“夢”をインフラとして描いてきた。主人公は諜報員を夢見る青年であり、変身ベルトはその願いで駆動し、中心にある組織C.O.D.E.は想像力を道具として扱う。本作はその比喩をより暗い方向へ押し進める。夢がヒーローを武装させるなら、白昼夢もまた大量生産され、標的へ向けられるということだ。

ここで映画は、単なる怪人退治の最終回を超えていく。玖門の狙いは破壊そのものではない。“合意の捏造”である。彼はゼッツを戦いで打ち負かす必要すらなく、国民に「もう負けた」と信じ込ませればよい。題名の“さよなら”は二重の意味を持つ。シリーズへの別れであると同時に、主人公が世間の信頼から強制的に追放されることでもある。ドラマは、大衆が信じたい物語を真実が追い越せるかどうかにかかっている。

大衆の怒りを武器に据えたこの選択が、最終章に思いがけず現代的な緊張を与える。悪役は力ではなく物語によって勝つ。主人公が直面するのは、勝てる戦いというより、覆せない世論だ。仮面をかぶったヒーローが、守るべき人々に「お前こそ脅威だ」と断じられたとき何をすべきか――クライマックスの壁は、より大きな怪物ではなく、より小さく冷たい問いなのである。夏休み興行のライダー映画が背負うには重いテーマであり、この見送りが単なる凱旋以上に見える理由でもある。

63分の夏映画がその主題をどこまで運べるかは、正当な問いだ。学校の長期休暇に合わせたライダー映画は、きれいに決着し、次のシリーズへの橋渡しを兼ねる傾向がある。本作も例外ではなく、フランチャイズの世代交代を前に、次作の新ライダーが早くも姿を見せる。パラノイア的な枠組みは軽く羽織られた衣装にとどまり、ベルトが輝くころには陰謀が片付いている可能性もある。この短さの映画は、提起した問いを完全に裁ききることはできず、示唆して先へ進む。

The ensemble cast of Kamen Rider Zeztz Farewell Mission in 2026
The titular hero of Kamen Rider Zeztz: Farewell Mission (2026)

本作は二本立ての一本として上映され、『超宇宙刑事ギャバン インフィニティ 太陽が泣いた日』と併映される。二つのヒーロー作品を一枚のチケットに束ねる、東映の夏興行の恒例だ。復帰組には天野浩成や堀口真帆が名を連ね、次シリーズの主演陣も世代交代の布石として早くも顔を出す。主題歌はYutaが歌う「Dreams Never Sleep」。

『仮面ライダーゼッツ さよならのミッション』は2026年7月24日、全国の劇場で公開される。上映時間は63分、夏の二本立てプログラムの一本としての上映となる。

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