映画

『Love Is in the Air』恋の化学反応は大失速

Alice Lange
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グレートバリアリーフの鮮やかな青を背に、水上飛行機のエンジンが息を吹き返す。こうして私たちは、エイドリアン・パワーズ監督によるオーストラリアのロマンティックコメディ『Love Is in the Air』の世界へと誘われる。太陽の降り注ぐ逃避行を目指した作品だが、実際には滑走路で空回りしている時間のほうが長い。デルタ・グッドレムが、スクリーンから約20年遠ざかっていた期間を経て、家業を破綻から救おうと奮闘する、自立心の強い水上飛行機パイロット、ダナ・ランドール役で復帰。会社から派遣されたウィリアム・ミッチェル(ジョシュア・サッセ)が、彼女の事業にとどめを刺そうとやってくると、予想どおり火花が散る。

本作の共同脚本も手がけたパワーズは、『Strictly Ballroom』やトルコのドラマシリーズ『Sen Çal Kapımı』のような往年のロマンティックコメディが持つ、肩の力の抜けた魅力を再現しようとしているようだ。しかし、その試みは心からのオマージュというより、ぎこちない模倣に感じられることが多い。作品の最大の強みは舞台設定だ。クイーンズランド州の海岸線を捉えた空撮は息をのむほど美しく、パワーズはそれを生かして、物語に自由と冒険の感覚をもたらし、確かな手触りを与えている。ポップスターとして知られるグッドレムは、ダナに紛れもない活気を吹き込む。ただし、キャラクター自体の掘り下げは、水上飛行機の燃料タンクほどしかない。本作は2023年の作品だ。

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一方、グッドレムとサッセの相性は、本作が最も大きくつまずくところだ。二人の掛け合いはぎこちなく、ロマンティックな緊張感も自然に生まれたものではなく、作り物めいている。バーでのけんかのあと、酔った二人がキスを交わす重要な場面は、遊び心のあるシーンを狙っているのだろうが、演出が不自然で、感情的な重みを損なってしまう。ユーモアを狙った場面も多くは空振りで、陳腐な決まり文句や安易な常套表現に頼りすぎている。ダナの親友ニッキー(ステフ・ティズデル)をめぐるサブプロットは、とりわけ後付け感が強い。物語にほとんど貢献せず、不要な水増しに終わっている。

『Love Is in the Air』が本領を発揮するのは、ジャンルの魅力を素直に受け入れたときだ。地元の航空ショーを舞台にした最終幕では、パワーズがようやく物語を飛び立たせ、恋愛面でもそれ以外でも、心からわくわくする瞬間が訪れる。ダナとウィリアムが水上飛行機に二人乗りするシーンは、主役二人のあいだに生まれる、まれに見る静かな親密さを捉えている。映像もここで頂点に達する。

本作を救っているのはグッドレムの演技だ。ダナという人物の造形は水上飛行機のアルミ製の機体と同じくらい薄っぺらいものの、彼女は役に好感の持てる芯の強さを与えている。父親のジェフ・ランドールを演じるロイ・ビリングとの相性は、作品中で最も自然で心に響く関係性だ。ビリングは登場するたびに場面をさらい、ほかのキャストにはなかなか出せない温かみとユーモアをもたらしている。

一方、脇を固めるキャストの出来にはばらつきがある。ジョシュア・サッセ演じるウィリアム・ミッチェルは無難だが印象に残らず、キャラクターを魅力的に見せるのに必要なカリスマ性や奥行きに欠ける。ステフ・ティズデルのニッキーも掘り下げが不十分で、役割はほとんどコメディリリーフに限られている。ダニエラ・ピッツィラーニ演じるセレナと、ミア・グルンワルド演じるミシェルは、短い出番ながら作品に待望の活気を加えるものの、結局は脇に追いやられてしまう。

パワーズの演出は手堅いが、刺激に乏しい。予想のつく画面構成や編集に頼りすぎており、新鮮さや高揚感をもたらせていない。第2幕ではテンポが落ち、ダナとウィリアムが結ばれるのかどうかをめぐる駆け引きにも、次第に飽きてくる。企業による買収を扱うサブプロットはあまりにも見慣れた展開で、社会的なメッセージを盛り込もうとする試みも空回りしている。

テーマの面でも、『Love Is in the Air』はちぐはぐだ。家族、自立、伝統と進歩のせめぎ合いに触れてはいるものの、意味のあることを語るほど深く掘り下げてはいない。「愛がすべてを乗り越える」というメッセージは、予想どおりであるだけでなく中身も空疎だ。登場人物にも物語にも実質的な厚みがないため、その主張は説得力を失っている。

技術面は堅実だが、特筆すべきものはない。グレートバリアリーフを背景にした撮影は見映えがする一方、際立つほどの創意や芸術性には欠ける。音楽も印象に残らず、感情が高まる場面を効果的に引き立てているとは言いがたい。

『Love Is in the Air』は、軽やかなロマンティックコメディやグッドレムの音楽が好きな人には楽しめるかもしれない。しかし、より見応えのある作品を求める人にとっては、物足りなさが残る。

キャスト

写真:The Movie Database(TMDB)

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