サイエンス

ハダカデバネズミの遺伝子を入れたマウスは寿命が4.4%延び、炎症も減った

Peter Finch

ハダカデバネズミから借りた一個の遺伝子を持つマウスは、炎症が少なく、腫瘍も少なく、寿命の中央値が長くなる形で年を重ねた。マウスが持っていたのは、その齧歯類が備えるHas2遺伝子の型である。これは高分子量ヒアルロン酸と呼ばれる長鎖糖質の生産を引き起こす遺伝子だ。ハダカデバネズミはこの分子を非常に多く作り出し、ほとんどがんにならない。実験は、その仕掛けをマウスに引き写せるかを問うものだった。

ロチェスター大学の研究室で、生物学者のVera GorbunovaとAndrei Seluanovが、マウスの胚にハダカデバネズミのHas2遺伝子を組み込み、生まれたコロニーを誕生から自然死まで追跡した。改変マウスは皮膚、腸、関節などの組織で、この長鎖糖質の量が高かった。通常のマウスと比べると、加齢に伴う自然発生の腫瘍は34%少なく、化学物質で誘発される皮膚がんも少なく、組織全体の炎症も低く、加齢に伴う腸のバリアも丈夫になっていた。

見出しの数字は絶対値としては控えめだ。寿命中央値の4.4%増。しかし生物学的な広がりは大きい。ヒアルロン酸は珍しい物質ではない。全身の細胞のあいだに存在し、関節を潤滑させ、皮膚で水を保ち、免疫系に信号を送る。ハダカデバネズミの型が目を引くのは、分子がマウスやヒトのものより約5倍長く、長い鎖が、加齢に伴う複数の病をいちどに駆動する炎症性シグナルを抑えるように見える点だ。

チームは、選んだDNA配列をゲノムの決まった場所に挿入し、数世代のマウスに引き継いで形質を安定化させるトランスジェニック手法で動物を作製した。組織サンプルはヒアルロナン量を計測し、剖検で腫瘍を数え、寿命は同じ条件で育てた対照マウスと比較した。これは老化研究の標準的な手順であり、結果が査読の風雨に耐えてきた理由の一つでもある。

限界も重要だ。これはマウスでの研究であり、ヒトの研究ではない。寿命中央値の4.4%は、より雑音の多いコホートでは消えてしまいかねない小ささだ。コロニーは一つだけ、一機関だけのものであり、組織によっては遺伝子がハダカデバネズミ本来の水準を上回って発現しており、それ自体が副作用を生む余地がある。ヒアルロン酸のシグナルもまた両刃で、分子の短い断片は炎症を促す側に回りうるため、保護効果は、体が長い形を実際に保てているかに左右される。

研究の前線はいま薬理学に移っている。長いヒアルロン酸を短い断片に切る酵素の働きを遅らせる薬剤候補がいくつも設計されている。実質的には、遺伝子改変を行わずにハダカデバネズミの構成を模倣する戦略だ。これらの分子は前臨床試験に入っており、齧歯類の生物学からヒトの治療へ抜ける最短経路と見られている。ロチェスターのグループの原論文は2023年8月23日にNatureで発表され、研究室は2026年5月、コロニーが高齢期に入ってもなお追跡が続いていることを確認している。

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