映画

Honor Societyは青春コメディを野心の非情な寓話に変える

オラン・ゼグマン監督作は、アンゴーリー・ライスの大胆な演技が支える。
Martha O'Hara
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「ハーバードへの道を邪魔する奴は全員潰せ」と言わんばかりの冷たい笑みを浮かべるアンゴリー・ライス演じるホナー・ローズ。彼女の部屋やロッカーに並ぶポスターや本が、マキャヴェリ的な野心を静かに物語る。だが、この高校生コメディは単なる「悪役の成長物語」では終わらない。

アメリカで「Honor Society」と呼ばれる制度は、学業成績や指導力など一定の基準を超えた生徒を表彰する組織を指す。全米の実際の名誉クラブも、成績だけでなく指導力や人格を評価基準に加えることが多く、そうした制度への皮肉な視線が本作の出発点になっている。そのタイトルをそのまま冠したこの映画は、エリート主義そのものを笑いの標的にしながら、そこに本気で憧れる主人公を描くという、ひねりの利いた構えを取る。

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オラン・ゼグマン監督の『Honor Society』は、表向きはハーバード進学に燃えるホナーの物語だが、実際にはもっと鋭い牙を隠している。ホナーが進路指導教師カルヴィン先生(クリストファー・ミンツ=プラス)の推薦状を手に入れるため、マイケル(ゲイテン・マタラッツォ)を含む3人のライバルを陥れる計画を練るくだりでは、その冷徹さに観客はたじろぐ。とりわけマイケルの弱みを探ろうと近づく場面は、皮肉と暗いユーモアがよく効いている。

映画の核はホナーの変化にある。最初は完全な策士に見える彼女が、マイケルとの関係を通じて少しずつ人間らしさをのぞかせていく。この転換は無理がなく、アンゴリー・ライスの演技がそれを支えている。特にホナーが自分の行いを省みる場面では、その内面の揺れが伝わってくる。マイケルを演じるゲイテン・マタラッツォも、皮肉屋でありながらどこか誠実な青年像を丁寧に作り上げており、ホナーとの対話の場面には自然な緊張感が漂う。

競争相手として描かれるケネディ・パーク(エイミー・キューム)、ゲイリー(ベン・ジャクソン・ウォーカー)、タリア(ケルシー・マウェマ)、エマ(エイヴリー・コンラッド)らの存在も、ホナーの世界の狭さと息苦しさを際立たせている。一方、ホナーの両親ジャネット(ケリー・バトラー)とマーヴィン・ローズ(マイケル・P・ノーシー)は、彼女の野心の出どころをさりげなく感じさせる。

一方で弱点もある。物語運びは読めてしまう部分が多く、第三幕は駆け足になりがちだ。トラヴィス・ビギンズ(アルマーニ・ジャクソン)らのサブプロットも、本筋から浮いてしまう瞬間がある。それでも、ホナーとマイケルの関係の変化そのものは丁寧に描かれており、失速感を最小限に抑えている。

サウンドトラックも見逃せない。ベン・ゼイドマンとダニエル・マルコヴィッチが手掛けた「Honor On A Mission」を含む全10曲、約16分のアルバムは、映画のトーンを的確に支えており、冒頭で流れるテーマ曲はホナーの野心をひと言で言い表している。

本作は1時間37分というコンパクトな尺のコメディで、2022年7月29日にParamount+で配信された。公開直後から批評家の反応は概ね好意的で、なかでもアンゴリー・ライス、ゲイテン・マタラッツォ、クリストファー・ミンツ=プラスの芝居が高く評価された。実際に観ても、その評価には頷ける部分が多い。三者の掛け合いには、脚本の意地悪さを俳優たちが人間味へと転じてみせる巧さがあり、単なる毒舌高校コメディでは終わらせない厚みを生んでいる。

テーマの射程は進学競争だけにとどまらない。ホナーの変化を通して、人間関係や自己成長そのものが、この高校生コメディの外見以上に丁寧に問われている。『Honor Society』は使い古された高校コメディの型をなぞる場面も少なくないが、鋭いユーモアと丁寧なキャラクター描写のおかげで、最後まで飽きさせずに見せきる作品になっている。ライス、マタラッツォ、ミンツ=プラスをはじめとするキャスト全体の芝居が、その飽きさせない土台を作っている。

キャスト

写真: The Movie Database (TMDB)

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