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梶浦由記、誰も話さない言葉でアニメを歌わせてきた作曲家

Penelope H. Fritz
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梶浦由記
梶浦由記
Photo: kajiura yuki / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
生年1965年8月6日
日本 東京
職業作曲家、音楽プロデューサー
受賞日本アカデミー賞 優秀音楽賞 (共同) · ニュータイプアニメアワード 音楽賞

アニメMADLAXの銃撃戦に重なる「nowhere」のサビを、ファンは長年にわたって聞き取り、歌詞に起こそうとしてきた。「ヤンマーニ」と聞こえるその言葉が何語なのかをめぐって議論し、フォーラムではさまざまな説が飛び交った。梶浦由記がラジオ番組でついに説明した答えは、どの言語でもない、というものだった。彼女はこうした歌詞を「梶浦語」と呼ぶ。意味ではなく響きを基準に選んだ言葉であり、以来一貫して、何を聞き取るかは聴き手に委ねている。

説明を拒むその姿勢は、日本のアニメ音楽界で最も商業的な成功を収めたキャリアのひとつを貫いている。梶浦の音楽は魔法少女まどか☆マギカ、Fate/Zero、ソードアート・オンライン、鬼滅の刃を彩り、See-SawからKalafina、FictionJunctionに至るボーカルプロジェクトは、アニメ主題歌を独自の楽しみ方で追いかけるファンのための一大カタログを築いてきた。数小節聴けば、それとわかる音がある。電子音の脈動に重なる合唱、ポップボーカルの下を流れるクラシック調の弦楽器、そしてシリーズ全体を通して、少しずつ姿を変えながら戻ってくるメロディーだ。

梶浦は1965年8月6日に東京で生まれ、父の伴奏をしながらピアノを覚えた。父の仕事の都合で、小学生のときに一家は西ドイツへ移り、中学2年生までそこで暮らした。7歳で初めて作曲したのは、日本に残してきた祖母に贈る別れの歌だった。東京に戻ると、高校時代はアマチュアの女子バンドでキーボードを担当。津田塾大学で英文学を学び、1988年の卒業後は通信会社NTTにエンジニアとして入社した。

バンドは会社勤めより長く続いた。レコード会社の目に留まり、1993年、梶浦はボーカル兼作詞家の石川智晶とともにSee-Sawとしてプロデビューを果たす。2年後にデュオの活動が途絶えると、梶浦は映画やアニメEat-Man、PlayStation用ゲームDouble Castの音楽を手がけるようになった。また、全員女性の劇団のために舞台ミュージカルを立て続けに書き、若手歌手の南里侑香を指導した。真下耕一監督と組んだ2作品、2001年のノワールと翌年の.hack//SIGNは、今日まで梶浦の名と結びつくサウンドを確立した。.hack//SIGNでは、アメリカ人歌手のエミリー・ビンダーに10曲以上を提供している。

ノワールをきっかけに石川も復帰し、再始動したSee-Sawは、梶浦の業界での立ち位置を変える曲を世に送り出した。2002年の機動戦士ガンダムSEEDのエンディングテーマ、「あんなに一緒だったのに」だ。ガンダムシリーズは、梶浦にとってもうひとつのホームとなった。南里とのプロジェクト、FictionJunction YUUKAは、「暁の車」など機動戦士ガンダムSEEDの楽曲でヒットを飛ばす。2008年には、映画シリーズ空の境界の主題歌を軸にした女性ボーカルグループKalafinaを始動。翌年には、歌い手が入れ替わるオープンなプロジェクトFictionJunctionを立ち上げ、現在も彼女の主なライブ活動の場となっている。

その後の10年間は、梶浦にとって活動の幅が最も広がった時期だった。魔法少女ものから悲劇へと転じるシリーズ魔法少女まどか☆マギカが、2011年、視聴者がラテン語やイタリア語だと思った詠唱風の曲を伴って登場する。梶浦は後に、それらは意味のない創作語だと明かした。同じ年にはFate/Zero、2012年にはソードアート・オンラインが続く。後者の戦闘曲「swordland」について、梶浦は主人公の見せ場を彩る音楽だと語っている。NHKは歴史番組「ヒストリア」と、2014年の朝ドラ花子とアンに彼女を起用し、アニメファンとは縁遠い視聴者にも、毎日その音楽が届いた。そして2019年には、椎名豪とともに音楽を手がけた鬼滅の刃が登場する。映画劇場版「鬼滅の刃」無限列車編では、梶浦がLiSAとともに歌詞を書き、「炎」を作曲。同曲は2020年に日本レコード大賞の大賞を受賞し、劇伴では梶浦と椎名が日本アカデミー賞音楽賞に輝いた。

成功の裏には、厳しい局面もあった。2017年12月、スポーツ紙のスポニチは、梶浦が25年間所属したマネジメント会社Space Craft Produceを、契約をめぐる問題から退所すると報じた。梶浦は2018年2月に退所を認め、Kalafinaのプロデュースからも離れた。同年後半には3人のメンバーのうち2人が事務所を退所し、2019年3月、Space Craftはグループの解散を発表した。梶浦は自身のマネジメント会社FictionJunction Musicを設立し、活動を続けた。その後のクレジットを見ると、誰の作品なのかという疑問が浮かぶのも無理はない。近年の大作の多くは共同制作で、鬼滅の刃は椎名と、新作魔法騎士レイアースはほか2人の作曲家と手がけている。梶浦の名を冠したチームを通じて、彼女のサウンドがスクリーンに届く機会は増えている。

2026年の仕事には、その両面が表れている。8月には、2013年の映画Rebellionの長らく待たれていた続編、劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉が公開され、梶浦の音楽とFictionJunctionの主題歌「カナタ」が日本の劇場に響いた。梶浦によると、今回は自由に任せてもらえたため、観客に答えを押しつけるような音楽は避け、観る人が自分で考えられる余白を残そうとしたという。10月には、CLAMPの魔法騎士レイアースの新作テレビアニメがテレビ朝日で始まり、梶浦、オザワタクミ、寺田志保が音楽を担当した。同年初めには、シカゴ近郊のAnime Centralで初のソロコンサートを開催。NHKの「tiny desk concerts JAPAN」に出演し、夏にはYuki Kajiura LIVE vol.#22のツアーで日本各地のホールを回った。

スタジオを離れた梶浦は、プロロードレースを熱心に追いかけている。自転車漫画『弱虫ペダル』をきっかけにその情熱が再燃し、2017年にはツール・ド・フランスを現地で観戦した。

ツアーのアジア公演は10月31日の台北から始まり、11月15日に香港、11月22日にソウル、11月27日にシンガポールのAnime Festival Asiaへと続く。1月にはレーベルのFlyingDogから、梶浦の楽曲を中心に収めたガンダムSEEDコレクションSEED SONGSが発売され、Aniplex of Americaは新作まどか映画を北米で公開する。次回ツアーvol.#23の日程も、すでに2027年9月まで組まれている。会場の観客は梶浦語のサビを歌い、彼女はこれからも、その意味を聴き手に委ね続ける。

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