リリースと予告編

『Duchess』レビュー:シャーロット・カークの存在感が光る、骨太ながら既視感の拭えない犯罪スリラー

Veronica Loop
Googleで追加する

Duchessの冒頭が、作品全体のトーンを鮮烈に打ち出す。傷だらけで血まみれのスカーレット・モナハンを演じるシャーロット・カーク(Charlotte Kirk)が、薄汚れた地下のアジトで、武装した男たちを真正面から見据えるのだ。英国の骨太な犯罪スリラーに新風を吹き込もうとする本作らしい、大胆で生々しい導入だ。ただし、新しさは相対的なもの。ニール・マーシャル(Neil Marshall)監督作のDuchessは、『Dog Soldiers』や『The Descent』といった過去作の影から抜け出すのに苦戦している。

マーシャルが手がけたのは、カーク演じる労働者階級出身のアンチヒロインを中心に据えた復讐劇だ。スカーレット・モナハンは、ささやかな犯罪に手を染める小悪党として登場する。取引の失敗をきっかけに危険なダイヤモンド密輸の世界へ引きずり込まれ、死んだものとして置き去りにされる。そこから彼女は裏社会で恐れられる存在へと変貌し、自分を裏切った者たちへの復讐に乗り出す。「裏切られた女が奪われたものを取り返す」という筋立てはいたってシンプルだが、物語の運びには難がある。

YouTube video

Duchessの魅力としてまず挙げたいのは、カークの演技と、暴力と道徳的な曖昧さに満ちた世界の中心に女性を据える姿勢だ。脚本を共同執筆したカークの手腕は、スカーレットの人物造形にも表れている。どれほど突飛な状況に置かれても、地に足のついた人物として感じられるのだ。アクションシーンの振り付けもよく練られており、とりわけ廃倉庫で繰り広げられる苛烈な格闘シーンでは、カークの身体能力と、痛みの生々しさを貫こうとする本作の意気込みが際立つ。

フィリップ・ウィンチェスター(Philip Winchester)が演じる、葛藤を抱えた恋人ロバート・マクノートンや、父フランク・モナハン役のコルム・ミーニー(Colm Meaney)ら脇を固める俳優陣も、物語に安定感を与えている。ただし、典型的な役柄を超えて強い印象を残す人物はほとんどいない。本作の本当の見どころは、スカーレットと、敵対する密輸業者ビリー・バラカを演じるホジ・フォルトゥナ(Hoji Fortuna)の関係性にある。カークとの間には緊張感が火花のように散り、二人が共演する場面は本作のハイライトのひとつだ。人物をもっと丁寧に掘り下げていれば、Duchessがどんな作品になり得たのかを垣間見せてくれる。

一方でDuchessは、影響を受けた作品を意識しすぎると足取りが乱れる。テンポにはむらがあり、説明に終始する場面が長引いて、アクションシーンが生み出した勢いを削いでしまう。マーシャルの演出も、しばしば模倣の域を出ない。ガイ・リッチー(Guy Ritchie)を思わせる畳みかけるような会話や、ジョン・マクティアナン(John McTiernan)作品を連想させる緊迫感あふれる強盗シーンが見て取れるものの、同じ切れ味のよさや緻密な構成には及ばない。

スタイルを中身より優先しがちな点も、本作の弱みだ。映像はときに目を引くものの、アクションシーンでは手持ちカメラの揺れに頼りすぎており、混乱した状況を追いにくい。音楽もまずまずではあるが、作品を意味のある形で引き立てるには至っていない。こうした選択は、Duchessが抱える根本的な問題を浮き彫りにする。犯罪スリラーに新味を加えた作品として真剣に受け止められたいと願いながら、結局は無難な道を選んでいるのだ。

テーマ面では、Duchessはおなじみの題材を扱う。社会の仕組みが自分に不利に働くなかで闘う労働者階級の女性、復讐がはらむ道徳的な曖昧さ、そして権力が人を蝕むさま。こうしたテーマは、Fish TankやLady Macbethなど、主人公の心理の複雑さをより深く掘り下げた作品で、すでにいっそう効果的に描かれている。

ジャンル作品として見ると、Duchessは犯罪スリラーとして堅実な一本ではあるものの、目新しさは乏しい。強い女性主人公が活躍する、荒々しくアクション満載の物語を好む観客には響くだろう。しかし、作品がひしめくジャンルのなかで際立つだけの独創性や深みには欠けている。

Duchessのプレスリリースでは、マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)やガイ・リッチーらの映画作家が広めてきた、誰もが愛する犯罪スリラーというジャンルに新たな視点をもたらす作品だとうたわれている。だが、Duchessはその高い目標には届かない。心から胸が躍る瞬間があり、応援したくなる主人公もいる一方で、既視感のある構成と不均衡な演出が作品の足かせになっている。

結局のところ、Duchessは長所と短所が入り交じる作品だ。復讐と再生を説得力豊かに描く可能性を秘めていながら、見慣れた型に頼り、独創性を欠くためにその可能性を生かしきれていない。カークの演技は見どころで、アクションシーンもよくできているが、それだけでは同ジャンルの作品を超えるには足りない。

力強い女性主人公が活躍する、わかりやすく楽しめる犯罪スリラーを探している人なら、Duchessは期待に応えてくれるかもしれない。

キャスト

写真:The Movie Database (TMDB)

タグ: , , , , ,

Googleで追加する

ディスカッション

0件のコメントがあります。