リリースと予告編

『One Fast Move』――疾走感あふれるレース、描き込みの浅い人物たち

Martin Cid
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One Fast Moveの冒頭は、革と金属、アスファルトが渦を巻くような場面から始まる。不名誉除隊となった元兵士ウェス・ニールを演じるケイ・J・アパ(KJ Apa)は、轟音を響かせるバイクにまたがり、ハンドルを握る拳に力を込める。カメラはエンジンのうなりと、身体の下で伝わるパワーの振動をじっくり捉える。アドレナリンをかき立てる映像だが、ケリー・ブラッツ(Kelly Blatz)監督の本作は、スピード感と物語の厚みを両立させようとすると、足取りが乱れてしまう。

脚本を手がけたブラッツは、本作で監督デビューを飾り、アクション、ドラマ、ロマンスの三つを柱に据えようとしている。アクションシーンが本作最大の見どころであることは間違いない。荒々しく生々しい映像には、初期のFast & Furiousシリーズを思わせる勢いがある。Riverdaleのアーチー・アンドリュース役で知られるアパは、身体を張った役にも対応できることを示している。サーキットでのスタントは見応えがある一方、感情表現の幅には限りがある。とりわけ高速チェイスやレースの場面では、身体能力を前面に押し出した演技に、むき出しの迫力が感じられる。しかし、脚本が繊細さや深い感情の響きを求めると、アパの演技は力不足に陥る。ウェスの人物像は、血の通った一人の人間というより、表面的な反応を寄せ集めたものに映ってしまう。

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ウェスと疎遠になっている父親、ディーン・ミラーを演じるエリック・デイン(Eric Dane)は、年季を感じさせる魅力を役に与えている。荒っぽい父親像の定型と、心からの温かさが垣間見える瞬間との間を行き来するものの、人物像は最後まで十分な奥行きを得られない。デインの演技が最も光るのは、アパと同じ画面に立つ場面だ。なかでも、不名誉除隊となった経緯やプロレーサーになる夢をめぐり、ウェスと父親が緊張をはらんだ、すれ違いの会話を交わす場面が印象に残る。そこには、作品が最後まで掘り下げきれなかった感情の核が垣間見える。

物語は、プロのバイクレーサーを目指すウェスが、父親に助けを求めるところから展開していく。父と息子の緊張に満ちた、壊れかけた関係が作品の中心にあるものの、ブラッツは表面的な衝突の奥にある感情を掘り下げきれない。賢明だが謎めいたメンター、エイベルを演じるエドワード・ジェームズ・オルモス(Edward James Olmos)は、作品に重みを加えている。しかし、その人物は物語に自然に溶け込むというより、筋立てを支えるための便利な存在に感じられることが多い。オルモスは知恵と導きを授ける役割を担うが、ウェスやディーンとのやりとりには無理があり、ブラッツがしっくりこない師弟関係の筋書きを、物語に押し込もうとしているように見える。

One Fast Moveが最もつまずくのは、マイア・レフィッコ(Maia Reficco)演じるカミラをめぐるロマンスだ。カミラはウェスの恋の相手となる、小さな町で歌う女性。二人の相性は不自然で、共に過ごす場面にも、ありきたりな展開を超えるだけの輝きがない。感情に重みを添えるはずのレフィッコの歌唱シーンも、物語に欠かせない場面というより、唐突に差し込まれた幕間のように映る。本作はカミラをウェスの心の成長を促す存在として描こうとするが、人物造形は浅く、単調だ。この恋愛要素は、深みや真実味を伴わないまま、ドラマにもう一層加えようと焦って付け足されたように感じられる。

テンポにも難がある。ブラッツは、ウェスのレースへの野心、ディーンとのぎくしゃくした関係、カミラとの芽生えかけた恋のうち、どれを中心に据えるのか決めきれていない。その結果、複数のサブプロットが互いに注目を奪い合いながら、どれも強い印象を残せない、まとまりに欠ける物語になっている。アクション、ドラマチックな対立、ロマンチックな場面の切り替えも唐突で、物語のどの要素にも深く入り込むのが難しい。

とはいえ、One Fast Moveに評価できる点がないわけではない。アクションシーンは振り付けがよく練られ、このジャンルらしいリアリティを感じさせる撮影によって、作品の世界に確かな手触りを与えている。アパがサーキットで披露するスタントは特に見事で、バイクレースの興奮と危険を見事に捉えている。デインの演技には難もあるが、ディーンに複雑さを与え、単純な一面的な敵役ではない人物にしている。そして、アパはまだ圧倒的な演技力を備えた俳優とは言えないものの、身体表現とひたむきさには将来性がうかがえる。

製作面の水準は安定しており、アトランタはさまざまな小さな町の風景を違和感なく演じている。撮影はバイクレースのむき出しのエネルギーを捉え、音響設計はエンジンの咆哮やタイヤのきしむ音で観客をその場に引き込む。しかし、こうした技術面の強みも、脚本の一貫性のなさを補うには至らない。

One Fast Moveは、深みが足りないまま、あれもこれも盛り込もうとする作品だ。アクション映画として一定の水準には達しているものの、父と息子のドラマなのか、レースを描くスリラーなのか、それともロマンスなのか、軸が定まらない。演技にはばらつきがあり、テンポも不安定で、感情面の核は掘り下げ不足に終わっている。

ハイオクタンなアクションやバイクレースが好きな人なら、One Fast Moveに胸躍る瞬間を見いだせるだろう。一方、深く心を揺さぶる物語や、家族の関係を繊細に掘り下げた作品を求める人には物足りない。気軽に楽しめる娯楽作ではあるが、見終えたあとまで印象に残るだけの中身には欠けている。

結局のところ、One Fast Moveは、深みが足りないまま、あれもこれも描こうとする作品だ。

キャスト

写真:The Movie Database(TMDB)

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