映画

『タクシードライバー』:都会の狂気へと沈む、戦慄の物語

Martha O'Hara
Googleで追加する

タクシードライバーの冒頭、黄色いタクシーの汚れたフロントガラスに、雨が涙のように筋を描いて流れ落ちる。ニューヨークのネオンがその向こうににじむ。マーティン・スコセッシのカメラは、ただ街を映し出すのではない。排気ガスを吸い込み、爪の間にこびりつく汚れまで感じるよう、観る者をその場へ引きずり込む。眠らない街で、トラヴィス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)もまた眠れない。都会のジャングルを夜ごと走り回る不眠症のタクシー運転手は、やがて狂気へと沈んでいく。

スコセッシのこの作品は、単なる犯罪ドラマではない。孤独と執着を描いた心理劇でもある。ベトナム戦争から帰還したトラヴィスは、同じように行き場を失った街をさまよう男だ。声に出して読み上げられる日記からは、暴力へと傾いていく彼の精神が浮かび上がる。デ・ニーロの演技は圧巻だ。序盤は静かに、しかし現実をつかむ力が緩むにつれ、次第に不穏さを増していく。「俺に話しかけてるのか?」という台詞は名場面として語り継がれているが、彼の幅広い表現力が真に光るのは、むしろ繊細な場面だ。ベッツィー(シビル・シェパード)とのデートでうまく振る舞えず、ぎこちなさが絶望へと変わっていく姿は、どんなアクションシーンにも劣らず目を離せない。

YouTube video

トラヴィスの行動に嫌悪を覚えながらも、彼に共感させるところに、この映画の力がある。スコセッシと脚本家のポール・シュレイダーは、自分を騎士のような存在だと思い込み、街の汚れを一掃する運命を背負っていると信じる男として、彼を描き出す。その妄想は、ベッツィーとの関係を築こうとして失敗する場面から、ポン引きのスポーツ(ハーヴェイ・カイテル)と激しく対峙する場面に至るまで、あらゆるシーンに色濃く漂う。マイケル・チャップマンによる粒子の粗い手持ちカメラの映像も、不安をいっそう募らせる。ニューヨークは、猥雑さと荒廃が入り組んだ迷宮となり、それ自体がひとりの登場人物のように感じられる。

しかし、タクシードライバーが描くのはトラヴィスだけではない。暴力を称揚する社会への批評でもある。彼の行動にもかかわらず、トラヴィスが英雄として称えられる物議を醸す結末は、このテーマを際立たせている。スポーツとの銃撃戦を生き延び、執着の対象となっていた12歳の売春婦アイリス(ジョディ・フォスター)を救い出したトラヴィスは、地元の英雄として扱われる。この展開は、芸術における搾取、とりわけフォスターの役柄をめぐる倫理的な問いを投げかける。彼女の演技は見事で、デ・ニーロの強烈な存在感に引けを取らない。一方で、アイリスという人物は、主としてトラヴィスの暴力を引き起こすきっかけとして存在している。

第3幕では、自警による正義を称揚する展開が前面に出る。このお決まりの型は、今となっては古びた印象を免れない。銃犯罪や銃乱射事件があまりにも身近な時代にあって、欠点を抱えながらも最後には英雄として描かれるトラヴィスの姿には、問題がある。暴力によって人々を救う存在に社会が惹かれる様子を映し出しているのだ。タクシードライバーはこのテーマを掘り下げるものの、十分に批判しきれてはいない。

それでも、欠点を抱えながら、タクシードライバーは映画史に残る一本であり続けている。その影響は、キング・オブ・コメディからジョーカーまで、さまざまな作品にはっきりと見て取れる。孤独と狂気を生々しく、目をそらさずに見つめるこの映画を支えているのは、デ・ニーロの力強い演技とスコセッシの卓越した演出だ。トラヴィスがチャールズ・パランタイン上院議員(レナード・ハリス)の暗殺を試み、スポーツと激しく衝突する最後の銃撃戦は、緊張感の演出の手本といえる。死の数時間前に作曲されたバーナード・ハーマンの印象的な音楽が、作品に満ちる心理的な恐怖をさらに高めている。

タクシードライバーは、複雑で欠点を抱えた人物の物語を好み、居心地の悪いテーマにも向き合うことをいとわない観客に向けた作品だ。安易な答えや明快な道徳観を示す映画ではない。むしろ、自分自身の内に潜む闇と向き合うよう、観る者に迫ってくる。荒々しいリアリズムと、都市の荒廃を容赦なく描く視線には時代性が刻まれている一方、孤独と執着をめぐる探求は、時を超えて響き続ける。

エンドロールが流れ終わっても、タクシードライバーの余韻は長く残る。疎外感と暴力というテーマは、1976年当時と同じ強さで、今も観る者に迫ってくる。誰にでも薦められる作品ではない。生々しい暴力描写や、若い俳優を搾取的に描く表現に敏感な人には、とりわけ厳しいかもしれない。それでも、その芸術性と映画界に与えた影響は疑いようがない。

評価:

タクシードライバーは今なお映画史に残る一本であり、その影響はキング・オブ・コメディからジョーカーまで、幅広い作品に息づいている。孤独と狂気を生々しく、目をそらさずに描き、デ・ニーロの力強い演技が物語を支える。心理描写の深さ、スコセッシの卓越した演出、そしてハーマンの不穏な音楽が、この映画の大きな魅力だ。

キャスト

写真:The Movie Database(TMDB)

タグ: , , , , ,

Googleで追加する

ディスカッション

0件のコメントがあります。