テクノロジー

テスラ「Roadster」が空を飛ぶ――車両エンジニアリング責任者ラース・モラビーがタイヤのグリップを捨てた理由

Adrian Kessler
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Roadsterの開発が長く遅れるあいだ、ラース・モラビー(Lars Moravy)は、この車が実在すると繰り返し説明し続けなければならないテスラ幹部だった。テスラの車両エンジニアリング責任者である彼は、ポッドキャストでRoadsterは本物だと語り、その週にも開発に携わったと話し、いずれ登場すると約束していた。そしてテキサス州中部にあるSpaceXのロケット試験場で、ついに車の横に立った。車体は湾曲した壁を駆け上がり、ほとんど逆さまの状態で壁に張り付いたかと思うと、落下しながら宙返りし、車輪から着地した。

報道の多くは、この発表をスタントショーとして扱ってきた。飛行、駐車中のテスラの列を飛び越えるキックフリップ、そして加速走行だ。だが、ステージ上でモラビーが説明した仕組みこそ、より大きなニュースといえる。新型Roadsterの性能は、もはや主にタイヤから生み出されるのではない。ファンで車体下部の空気を吸い込み、加圧タンクからノズルを通して噴射することで生み出される。この変化は、あの光景を可能にした理由であると同時に、この車が何を手放したのかも物語っている。

「本物だ」と言い続けてきた男

モラビーが語るRoadsterの物語は、2025年2月のポッドキャスト「Ride The Lightning」から始まる。開発計画はまだ生きているのかと尋ねられ、彼はこう答えた。「ああ、間違いなく本物です。今はSpaceXと一緒に取り組んでいます」。さらに、この車がどんな構想へと発展したのかを説明した。「コールドガススラスターは最高ですし、モーターの物理法則をある程度破るようなものを実現できます」。そして、こう付け加えた。「必ず登場します。先週の火曜日にも開発に携わっていました」。具体的な時期は示さず、その日のDrive Teslaの見出しは「発売日はまだ見えず」だった。

2025年7月、ファンイベント「X Takeover」で、彼は計画の仕切り直しについて語っていた。「この数年間、これまで何をしてきたのか、なぜそうしてきたのか、そして最高に魅力的な、最後の究極のドライバーズカーにするにはどうすればいいのかを、じっくり考え直してきました」。テスラはイーロン・マスク(Elon Musk)に「いくつか面白いデモ」を見せ、「彼も少し興奮していた」とも話した。CarscoopsはRoadsterを「自動車業界で半ばジョークのような存在」と評している。発表の場では、マスク自身も疑念を抱いていたと認めた。チームにこの構想を持ちかけたとき、「自分は正気なのか?」と思ったという。

テキサスでは、モラビーはこの計画を個人的な思いと結びつけた。Paul Tan’s Automotive Newsによると、彼は「Roadsterがあったからテスラに入社した」と語った。

限界はタイヤからタンクへ

彼が示した数値から、仕組みの物理的な背景が見えてくる。Paul Tanの記事によれば、モラビーは、タイヤだけなら車が得られるグリップは約1.26Gだが、Roadsterのファンシステムを使えば2Gを超えるコーナリングが可能だと説明した。推力については、TechCrunchとPaul Tanがともに、約600リットルの圧縮空気で作動する10個のノズルについての説明を伝えている。Paul Tanによると、空気の量は約250キログラムで、炭素繊維製の圧力容器2基に収められる。テスラ自身の投稿では、スラスターシステムがタイヤの4~5倍の力を生み出すとしている。

ランプ走行は、ファンの性能を示すデモだった。Paul Tanによれば、車は約21メートルの高さでピッチ角170度に達し、テレメトリーには4,700キログラムのダウンフォースが記録された。その後、スラスターが落下速度を抑えた。加速走行はタンクの力を示すものだ。記録映像では1秒で走り切り、会場での実走では、0から時速60マイルまで0.81秒を記録した。Yahoo Financeもこの数値を報じている。

テスラの旧紹介プログラムでFounders Series Roadsterを2台受け取る権利が、いまも未履行のまま残っているElectrekのフレッド・ランバート(Fred Lambert)は、この技術は本物だが「まったく新しいものではない」と評した。Paul Tanが指摘するように、吸引力で車体を路面に押しつける車の歴史は、1978年のF1マシン、ブラバムBT46Bまでさかのぼる。テスラが加えたのは、蓄圧したガスだ。電動アクチュエーターが細かな調整を行い、飛行中の車体を安定させる。

空気がもたらした代償

その代償はスペックに表れている。テスラは2017年、航続距離620マイル、最高速度250マイル超、4人乗りを約束していた。新型車がうたう航続距離は300マイル超で、Reutersは当初の約束の半分にも満たないと指摘している。最高速度は230マイル超だ。乗車定員は最大2人で、飛行仕様では1人となる。テスラによれば、車内で利用できる空間はすべて、炭素繊維で覆われた圧力容器で埋め尽くされている。TechCrunchが指摘するように、これはSpaceXのロケット爆発を何度も引き起こしたものと同じ種類のタンクだ。

デモには、いくつか但し書きもある。運転していた人はいなかった。「誰かを死なせないよう、このデモでは技術的に自動運転にしています」とマスクは説明した。キックフリップの最中にはスターマンのマネキンが運転席に座っていたが、テスラは「実在の人間ではない」と念を押している。飛行用に作られた「Rocket」は招待制で、公道走行の認可を受けていない。「Thrust」は後部スラスターのみを追加した仕様で、予約金は25万ドル。「Performance」は5万ドルで予約でき、ファンを備える一方、スラスターは搭載せず、0から時速60マイルまで1.6秒未満をうたう。

テスラは価格を明らかにしなかった。マスクは生産開始を2028年と述べた。イベントは10月15日、SpaceXのマクレガー施設で開催された。天候の影響でテスラが10月1日の開催を中止してから2週間後、そしてテスラが第3四半期決算を発表する6日前のことだった。Deepwaterのジーン・マンスター(Gene Munster)は、これを「従来の自動車メーカーを困惑させる以上の商業的価値はない、エンジニアリング力の誇示」と評した。マスクも以前、「収益面で大きく状況を変えるものになるかは分からない」と話していた。

モラビーは約束を果たした。車は登場し、モーターの物理法則に関する従来の常識を確かに覆している。しかし、スラスター搭載車を買う人にとって重要な数字は、まだ明かされていない。テスラによれば、Roadsterは自力でタンクを再充填できる。だが、補充にかかる時間も、タンク満量でどれだけ飛行できるかも示されていない。空を飛ぶRoadsterは、タンクに蓄えた分だけ飛べることになる。テスラは、その一回分で何度宙返りできるのかを明らかにしていない。

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